59.マウェートの二人

   地上も空も、マウェート軍の優勢だった。
 デリク・マウェートはやはり天空隊の最奥でセフィと共にことの成行きを眺めていた。
 ウィアズ王国の天空隊も善戦しているが、時間の問題だろう。最前線ではセフィが教えてくれた二人が戦っていた。
 高等兵士ロウガラ・エンプス。
 同じく、シリンダ・ライトル。
 戦った相手を蹴散らす様は確かに恐ろしかった。特にシリンダと言えば低空に定評ある戦士だというのに、上空でも戦えるのか。ロウガラの戦う姿はいわおうがな。
「セフィ」
 くすりと、デリクは失笑する。
「はい」
 デリクの心境を知ってか否か、セフィの表情も悪戯に笑っている。
 デリクは二人の高等兵士を指さして、やはり悪戯に笑った。
「あの二人と我々、どちらが強いと思う?」
「そうですね、」
 わざともったいぶって、セフィ。
「あの二人の強さは認めますが、私の足元程度でしょうか。デリク王子と戦って互角、もしくはデリク王子よりも少し上、程度でしょうか?」
「私はまだまだセフィの足元か? 厳しいな」
「それはもう承知の上でしょう? いかがなさいますか?」
「私はマウェート国民だ」
 がしゃん、とデリクが持ち上げた槍が音をたてる。セフィがくすくすと笑った。
「えぇ、『誇り高き』マウェート国民でいらっしゃる」
「負けたままでいられるものか。私の方が強いと、証明してみせよう」
「負けん気の盛んなことで」
 やはりセフィは楽しそうに笑い、「では」と自分も槍を持ち上げた。
「私も弟が来る前の準備運動にはなるでしょう。あの二人とデリク王子が私の足元、ということを証明してさしあげます」
 セフィが答えて、二人で笑い合った。
 同時に槍を掲げ、叫ぶのだ。
「今こそウィアズ軍を破る時だ!」
 デリクとセフィが同時に天空を駆れば、わっとマウェート軍、天騎士たちが歓声と雄たけびを上げる。
 マウェート軍の士気はさらに上がる。
 ウィアズ軍は、危機に瀕していた。
  
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