106.“さようなら”は別れの挨拶

   決行は翌日。
 前日エアーとピークは賊に向けて討伐するぞと告げた。投降するならよし。しないのなら殲滅する、と。
 解答の期限は正午だったが、王国軍からやってきた面々は日が昇りきる前にはすでに賊の本拠地である洞窟の前までやってきていた。
 ファルカ近郊にある山にぽっかりあいたこの洞窟。入り口は四つある。ワネックとライフはそれぞれ入り口一つずつを請け負った。ピークが入り口の中でもひときわ大きい山頂へ続く入り口に向かった。召喚獣ライディッシュがいるので、山頂へも軽々と向かえてしまうのである。他の魔道士はそれぞれワネックとライフとペアになって入り口を守っている。
 残り一つの入り口の横には隠れもせず、エアーとマーカー、ホルンがいた。
 三人で突入する気でいる。
 なぜホルンを、と問うマーカーにエアーは無表情で答えた。
「けじめをつけたいのは、ホルンだろう」
 とはいえ、エアーは最後の部分には一人で行くつもりでいた。“化け物”たちに、必ずかなうと二人の場合確信がない。ただ自分に一番従順な人間と、一番従順でない人間を連れてきただけ、というのが本音だった。
 洞窟の入り口の傍で、エアーはファルカを眺めた。広大な放牧地の向こう側に朝日に照らされる美しい都市。
「綺麗ですね、あの街」
 マーカーがエアーと同じ方向を見ながら声をかけた。洞窟の入り口の標高は少しだけ高くて、ファルカをすべてとは言わないものの上から見下ろす形になる。
 エアーはマーカーをちらりと見て、すぐファルカを見やった。
「あぁ」
 綺麗だ、と思った。
「城下町も綺麗でした。負けないぐらい」
 マーカーの澄んだ声も。
「あぁ」
 エアーは目を閉じた。
「ね、隊長。歌ってください。こんなとこいて隠れるつもりないでしょ?」
 ホルンがいつもの明るい笑顔でねだる。エアーは目を閉じたまま。
「エアー隊長のケチー」
 目を閉じたままだってホルンの表情が浮かんだ。朝日と同じぐらい暖かくてまぶしい笑顔。
「まあまあ、そんな状況じゃないし」
「でも聞きたい。ね、隊長。お願いします」
「………」
 エアーがため息一つ、ついて息を吸った。ホルンの表情が明るくなる。
「誰が歌うか」
 ホルンがむっとした顔をする。少しだけ軽い口調のエアーの返答にマーカーがエアーを見た。エアーは目を開けて、ため息をもう一つ。
「行くぞ。もう投降するつもりの人間はいないだろう。賊がファルカに向かう前に殲滅する」
 告げて、何事もないような足取りで先に進む。
「嫌ならここで待て。誰も出てこないぞ」
 エアーは振り向きもしない。マーカーが慌ててエアーの後ろに続く。ホルンは少し眉を顰めたがマーカーに続いた。マーカーはホルンに少し振り返った。振り返って、にこりと、少し笑う。
「無理はしないで、ホルン。入り口で捕縛していてくれればいいから」
「ううん」
 ホルンは微笑を浮かべて首を横に振った。
「平気。ありがとね。マーカーこそ平気?」
「うん、平気だよ」
 返答するマーカーも微笑を浮かべている。
「俺は決めたんだ、ついていくって」
「決めた?」
「うん」
 迷いないマーカーの返答を聞いて、ホルンが悪戯に笑う。
「そっか。いいね、それ」
「うん。そうだね」
 洞窟を歩く間、後ろで会話する二人にエアーはやはり振り返らない。薄暗い洞窟の中をただまっすぐに進む。進んで、後ろは振り返らない。ただ前だけを睨んで、変わることない歩幅とリズムでただ、前に進む。
「隊長はなんて?」
 ホルンが楽しげに問う、タイミングでエアーが立ち止まった。目の前には大きな扉がある。エアーは立ち止まったかと思うと片足を振り上げて、力の限りに扉を蹴飛ばした。
 けたたましい音がホルンとマーカーの会話を遮る。同時に入り込んだ光と光の中にいる人々の視線で、二人は意識を完全に切り替えた。
 洞窟中央に位置するひときわ大きな空洞。この空洞から四つの出口に道が続いている。
 空洞の中は薄暗い。壁に取り付けられた無数の松明が空洞を照らしているけれど、まだ足りない。端から見れば真ん中はすこし黒く見える。
「俺は、王国軍第一大隊二番隊隊長エアー・レクイズ」
 入り口から数歩中に入って、エアーは立ち止まる。声は張り上げていなかったけれど、空洞の中は声がよく響いた。
「昨日の返答を聞きに来た」
「早いじゃないか!」
 賊の一人が声を上げた。
「まだ朝だぜ、八時だ! 約束の時間じゃない!」
「で?」
 賊とは別に、エアーは静かに問い返す。ごく短い言葉で。
「約束の時間じゃねーってんだって!」
「待てば、考えが変わるのか?」
 少しだけ首をかしげて、エアー。
「なら後四時間、ここで待つ。だが何かを持って外に出ようとした時点で抵抗の返答とみなす。投降するなら武装を解いて請え」
 武装している人々を見れば瞭然。投降する気などないのだろう。だがエアーはあえて落ち着いた態で待つと答えた。口調は静かで、トーンはいつもよりもさらに低く。ただ立ったままで。
 叫んだ賊が言葉を呑んだ。顔には汗が浮かんでいたから、どうやら迷っている様子ではある。エアーは彼の顔色を見て、軽く失笑――嘲笑した。
「逃げるなよ。誰一人逃がさない。投降か死か、選べ」
 殺すぞと暗に告げたのは、一般に正義と言われる王国軍所属の高等兵士だ。乗り込んできたのはエアーたちだというのに、まるで賊たちが洞窟の中に押し込められているかのようだ。
 エアーは一息ついてからゆっくりと空洞を見渡した。――ざっと数十人。“化け物”は頭らしい男の近くに三体。ピークが少しずつ殺してきて、調べによれば最後の三体。
 相手にとって不足はないどころか、もしかしたら返り討ちになるかもしれないな、とエアーは少し思った。けれど不思議と死ぬ気はしなかったし、どうやら山頂にいるはずのピークが、この空洞に続く扉のすぐ前まで来ているらしい。足音が微かに聞こえたから。
 だが入ってこない。任せるということなのだろう。
 ありがたいな、とエアーは思った。
 自分の剣の本性を暴きたいと思っていたから、もう少し遠慮なく剣を振るえる機会を待っていた。
 空洞の中が静まりかえって数秒、唐突に足を鳴らしたのは、中央に座る頭らしき男だ。
「びびっちまってみっともねぇ」
 反響する声。エアーは意識を声の主に向けた。
「たかが三人だろうが。肩書きにびびって準備の手が止まってらぁ。ちゃきちゃき動きやがれ、逃げたきゃ逃げろ! 逃げるってことはこの俺に背くってことだ、わかってんだろうな」
 特別声を上げたわけでもないのに妙に声が響く。
「てめぇらこの国で力を使って他人を支配しようとするってことはな、もともと王国軍に叛くってことだ。いいか、暴力の権力の象徴はウィアズ王国軍! 王国軍は国王の暴力だ」
 微かに、エアーが目を細めた。不快ととれる不機嫌そうな目つき。
「んな暴力に叩きのめされ続けてたまるか。殴ったときにくる反動と一緒で、国民も迷惑してんだよ。なぁ?」
 頭の目線がエアーに向いた。エアーは軽く鼻で笑った。
「ただの害虫が何を偉そうに語る」
「お?」
 返答に、面白そうに眉を上げた、頭の顔。
「俺たちが害虫なら、お前らはなんだ? 他人から搾取したもので生きてるお前らは」
「王国軍は国を蝕むものを退治するためにある。例えばお前らもそう、マウェートもそうだ」
 目は笑わないままに微笑した、エアーの口元。
「人々は自分たちを守れ、守れと言う――にも関わらず搾取する、だと? お前らはただの耳元でうるさい蚊か。馬鹿らしい」
「どっちの話をしてんだ。頭でもおかしくなったか?」
「所詮――」
 エアーはゆっくりと鞘に手をかけた。抜きやすい位置に傾ける。
「そんなものだな。自分がよければいい、自分たちだけがいい思いをすればいい」
 ホルンが数歩、エアーから離れた。横でマーカーはホルンを見やって、だが立ち止まった。エアーの背中をじっと見た。臨戦の姿勢を徐々にとる、エアーの言葉を、じっと聞いた。
「違うか? 他人がよければいいのか? たとえそうだとして自分が一番利を手にしないとなぜ言える。偉そうなことをぬかさず、とっとと解答しろ。俺はいつでもお前らを殺せる」
(違う)
 呟いたのは、ホルンだった。マーカーはホルンを見やった。とても小さな声だった。
(そんなこと言っちゃだめ)
 俺もそう思うよと、マーカーは口に出さなかった。それもまた『言っちゃだめ』だと思ったから。
「俺が代わりに答えて差し上げましょうか、頭」
 頭、と呼ばれたのはやはり先ほどの男。呼んだのは壁際に立つ小さな男だった。エアーには見覚えがある、ファルカに来て最初に見た賊の一人だ。腰には飾りだろう剣。抜けない位置にぶら下げられていて、格好は他とは違って至って普段着。
「よし、ヌガラ。言ってやれ」
「はい」
 ヌガラ、と呼ばれた男が微笑した。嘲笑のような表情で。
「あなた方が来た理由は、三つある」
 ヌガラが視線をエアーに向けた。エアーは変わらぬ無表情のまま、姿勢を変えずにヌガラを見据えている。
「奇妙な病気、我々、“化け物”」
 エアーは答えない。ヌガラは壁際から離れもせずに続ける。何食わぬ顔で。
「答えは全てここにあります。欲しければ奪ってください。我々がしていることと同じように、力尽くで」
 エアーが目を細めた。エアーが言葉を返さず、返そうともしないせいで、後ろに控える二人も言葉を飲み込んでいた。
「それが最善だと思いますよ。最も被害を抑えられて、最も早く帰還して次に備えるためには、ね」
「……で?」
 ぼそり、と小さな低い声でエアーは答えた。エアーの声を聞いたヌガラが口に笑みを浮かべた。
「あぁ、『最善』じゃない『最良』ですね」
「………」
「善も悪もないって言ってましたよね、エアー高等兵士」
 ヌガラがエアーの目を見据える。エアーは動じなかった。
「直接そうは言わなかったけれど、俺はそう意訳させてもらった。善悪を決めるのは別の存在。当事者ではない」
 ヌガラが改心の笑みを浮かべた。くっくと喉を鳴らす。
「俺とあなたと、何が違うって? こんなにそっくりなのに、あなたは俺を――そして、我々を、殺せるんですか?」
「あぁ」
 エアーはごく淡々と。
「俺たちはあなたの何に関わりました? 悪いことはしてませんよ、病気の原因だったこの草だって“化け物”たちを従順にさせるのに役立った。これがなかったら被害はもっと出てたかもしれないのに」
「偉そうに」
 失笑。エアーは剣を抜いた。
「従順にさせて、人を襲わせたやつが何を偉そうに語る。お前はその草を使って“化け物”を自分の武器にした。武器を持って他人を支配しただけだ」
 剣をまっすぐ、ヌガラに向けてエアー。睨んだ。
「この剣と何が違う。力は行使する人間で色が全て変わる」
「だから我々はあなた方の色の力は嫌だと言ってるんです」
「気が合うな。俺もお前らの力の使い方が気に食わない」
 一瞬で空気が張り詰めた。張り詰めた空気の中でヌガラがくすりと笑う。
「あんまり聞いてた通りの人で笑えてきた。イオナさんが言ってましたよ、奔放そうに見えて、一番従順だったってね」
 エアーが微かに剣を持ち直す。いつでも振るえるように構えた。
「国に? 自分に? 俺は思った、絶対に『自分に従順だった』って。じゃなきゃ許さない、記憶に残るなんて許せない」
「解答しろ、結論は出ているはずだ!」
「決裂だ! 綺麗に着飾った王国軍の化けの皮を、あなたの死体で剥がしてやる!」
 ヌガラが解答した一瞬の後、エアーは地面を蹴った。蹴って、前に瞬発する。
 一閃、目の前の数人が喉から血を噴出して地面に倒れる。
 赤い噴水の向こう側で、賊の頭が声高に笑った。
「よく言った! やれ、“化け物”ども! あの男を殺せ!」
 洞窟によく響いた。まるで騒音――サリア・フィティの声よりも大きいだろうか、エアーは少しだけサリアの顔を思い出した。だがすぐに胸中でかぶりを振る。帰ったらきっとまた耳元で怒鳴られるんだろうなとか、つまらない感傷は切り捨てる。
 今はただ、目の前の敵を、討つことだけを。
 賊の頭の号令で三匹の“化け物”たちが動き出した。
 まずは二匹。素早い動きで一瞬でエアーに迫る。二方向から襲う“化け物”たちの位置を、エアーは感覚だけで認識した。――あるいは、人間が視覚として見ている視野の外側、外視野と呼ばれるそれを、完全に認識した。
 認識した後の動きは、エアーもまた“化け物”じみていた。一瞬で体を捻ると瞬時に判断した直線で、剣を一八〇度振るった。すると二匹の飛び出していた顔面を二つとも切り裂いた。
 二匹、“化け物”たちが沈黙して、一秒。最後の“化け物”がエアーの前に現れる。
 巨体、細い両手の先に不恰好な獅子の爪、足は象のものだろう。“化け物”たちの格好は妙に歪で攻撃的だ。
 巨体の化け物が頭上から爪を振り下ろした。エアーはとんっと地面を蹴ると爪を避けた。直後、地響きが洞窟に行き渡る。
 剣で防いでいたなら潰されていた。だがエアーはもとより腕力には頼らない。爪を避けた直後には、さらに地面を蹴って宙に浮かんでいる。戦場では馬の背を超える跳躍である。エアーは跳んだ勢いで剣を“化け物”の顔面に突き刺すと、自分の体が落ちる力を切り下ろす力に加えた。巨体はやはり見た目とは裏腹にあっさりと真っ二つになる。
 巨体の化け物が崩れて賊たちが騒ぎ出した。悲鳴を上げていた。
「で」
 軽い調子で着地して、エアーは化け物が真っ二つになって開いた視界の先にいる、賊の頭を睨んだ。
「最後の選ぶ機会をくれてやる。解答しろ、投降か、死か」
「ふざっ、ふざけるなっ」
 声が裏返って、賊の頭の顔には冷や汗が浮かぶ。
「まぐれあたりだ! やれ! 殺せ! 逃げんじゃねぇ!」
 辺りにわめき散らして、手当たり次第に手下をエアーに向かって放り投げた。空洞の中では“化け物”たちが簡単に死んだことで怖気ついた賊たちが悲鳴を上げて出口に向かっている。
「マーカー・クレイアン! ホルン・ノピト!」
 エアーは二人に背中を向けたまま、躊躇う二人を見えているようかのように怒鳴った。
「殺れ! 逃がすな!」
 賊の頭とさほど変わりない内容の叫び。
「一人も、逃がすな!」
 マーカーが「はい!」と即座に返事して入り口を塞ぐ。剣を構えて、逃げてくる賊たちに向ける。横でホルンが打たれたように棒立ちになっていた。
 ホルンの目の前ではエアーが、向かってくる賊を斬り殺している。真っ赤に染まっていく――視界が赤い水彩絵の具に塗りつぶされていくよう。
「ホルン・ノピト!」
 ただ一人を名指しして、再び怒鳴る。
「賊とのけじめをつけるつもりがないなら失せろ! ノヴァさんの隊に戻りたければ戻れ、辞めたければ辞めろ!」
「は、はいっ!」
 ホルンは両手で必死に剣を握った。逃げてくる賊に向かって剣を向ける。だが手が微かに震えている。――恐怖で。
 今ホルンが相手にしている人間に、戦意などないのだ。助けてくれと請う、請いながら剣を振るう。助けてほしいのならエアーの言葉通りに投降か、座り込んで震えていればいいのに。
 なぜ逃げるの、とホルンは思った。逃げたら斬らなければ、エアーの命令通りに。
(私たちと“化け物”たちって何が違うの?)
 一閃、した瞬間世界がさらに赤く染まった。色濃く染まった向こう側で、巨大な“化け物”の死体が崩れていくのが見えた。
(私も力を使って他を殺してるだけなの?)
 どうして強くなったのか?
 いつかの昔、エアーが胸中で自分に問うた言葉をホルンは同じように自分に問う。
 勝つことが楽しかった、だから強くなった。
 大義名分なんてものなくて、楽しくて、楽しいから努力を続けてきた。
 殺せと、命令されたのは初めてだった。
(そんなこと言わないで欲しかった、自分が殺してるって自覚……ううん、知ってたけど、それは……)
『あなたの上司の――』
 ホルンの脳裏に微かに甦る、消えてしまったはずの記憶。ホルンは目線を中央にいる“上司の”エアーに向けた。
『あなたの上司のことが少しでも疑わしかったから、どうぞこれで刺してあげて、目を覚まさせてあげてください』
 ホルンは剣を下げた。片手で持って、力なく立ち尽くす。エアーを見つめたまま。ホルンが唐突に動かなくなったので、マーカーが慌ててホルンを守るために動いた。そのため入り口に隙ができた。できた隙に、群がる人たち。マーカーは小さく舌打ちした。
 誰一人逃してはならないのだと、知っているから。逃がせば人々が――力ない人々が危険にさらされることを。
「ホルンっ、しっかりして。せめて自分の身ぐらい守って」
「目を」
 ぽつり、とホルンが言葉を発した。
「さま、す」
 マーカーはホルンに一瞬だけ振り返って訝った。ホルンの顔に表情がない。一心に前だけを見て、微動しない。
『もしこれがなかったなら、あなたの剣でも構いません。あなたが、ぜひ、彼の目を』
「さま、させる」
 虚ろ。
 マーカーも一度聞いたことがある。嫌な予感にマーカーは、対峙していた相手を弾き飛ばして、ホルンに振り返った。
 が、遅かった。
 そもそも彼女は弱くない。国内にも知れるほどに強いのだ。マーカーが振り返った瞬間にはマーカーの横を通り過ぎた。マーカーは瞬時に息を飲んで、叫ぶ。
「ホルン!」
 けれどホルンは振り返らない。マーカーの声など聞こえていないかのように、一心にエアーを見つめて視線を動かさない。人々の間を抜けて、剣を両手で握る、その迫力。
(『歌って』だと? ホルン、お前が詠われた曲も、お前にせがまれて昔は歌った)
「二度は、」
 エアーは剣を強く握った。ホルンが近づいてくるのを感じていた。低く――うめくように呟いて、エアーはホルンに振り返る。
「ないと、言ったはずだ!」
 怒鳴り、剣を振るう。紅い軌跡には、ホルンの体があった。
(もう歌わない。お前も、俺も、二度と)
  
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