>> プロローグ 伝書鳥の手紙 <<




 
青い海の上を、白い小さな伝書鳥が飛んでいた。






親愛なるイシュ・フィングラスへ
オリヴァー・イジッカより


 お元気ですか?
 こちらの太陽は相変わらず素敵に輝いています。風はいつもどおり。でもあなたが教えてくれた場所は、いつも清々しい風が吹いてるわね。時々レディと一緒に行ってますよ。
 あなたからはなかなか手紙が来ないから、あなたが今何をしているのかとても気になります。でもあなたは筆不精だから、来なくて当たり前なのかしらね。レディや他の人からも手紙来ているでしょう。あ、でもレディも筆不精だから、いつもの口調で書いているでしょう。まったく、あなたも彼女も、似た者同士だわ。
 こうして書いていると思い出すわね、あなたがレイゼランズにいた頃のこと。あなたいつも笑うから、私も一緒になって笑ってしまったものだわ。いつも正直者で、クレフトにだまされたり、レディに怒られたり、そればっかりだったんですもの。でも、あなたがいてくれてよかったわ。あなたの入ったカプセルを見つけられたことは、私の人生の中で一番良かったことの一つ。一番が多すぎて欲張りかしら?
 ねぇ、そろそろこちらに帰ってこない?
 あなたが生きているということは、私たちが証明できる。あなた自身が証明する必要はないわ。
 それと……最後になってしまったけれど、連絡があります。
 あなたのバンクに大切なものを送りました。どうかあなたの傍においてください。あなたのしたいことを助けてくれるはずですから。
 長くなってしまったわね。でもこれでお終い。
 返事は遠慮するわ、あなた絶対に書かないもの。
 それじゃあね、イシュ。





レイゼランズの皆さんへ
イシュ・フィングラスより


 拝啓、今いるのは海の上。空も海も綺麗だ。太陽は嫌味なくらい光ってるけど。
 なんて、俺が書くと皆爆笑するんだろうな。っていうか、俺から手紙が来た時点で、クレフトあたりが雨が降るとか言ってるんだろうけど。
 まぁ、久しぶりに手紙を書きました。船長さんがいい人で、ペンを借りて自分の船室で書いてます。
 皆の手紙は届いてるよ。いつも大切に読ませてもらってます。きちんとポケットの中にいれてさ。俺は元気だよ、皆も元気そうでなにより。
 オリヴァーさんの手紙長かったなー。レディのは相変わらずわけわかんねぇし、ノティリアは反対に分かりやすくて短いし、ライジーは相変わらずテンション高いし。
 そうだ、クレフト。お前の伝書鳥は、手紙とると即効で帰るんだ、返事なんか書ける暇なんかないぜ。
 でも本当に皆変わりなさそうでよかった。
 俺はこれからゼイランドのセレダランスに向かおうと思ってるところ。ゼイランドの文明ってスゴイんだって、一回見てみたかったんだよな。帰るのはゼイランド見てから考えることにするよ。

 あ、そうだ。オリヴァーさんへ。
 バンクに送ってくれたアレ、なんだ?
 剣かとおもったら、鋭くもないし、結構重いし……。鞘かとおもっても、全然動かないんだ。大切なもんっていう意味は、全然わかんね。でも、持っとく。なんだか飾りでもなんでも、持っとくと安心するよ。なんでだろうな。とりあえず、ありがとう、オリヴァーさん。

 と、ここから皆にな。
 また手紙送ってくれよ。俺から手紙こなくてもめげずにさ。ペン貸してくれる人少ないからなかなか書けないんだって。

 じゃあな、皆。
 またな。

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